街角で生きる若年女性ホームレスに見た。脱出できない闇

都会の片隅。高架橋の下。道端に広げられた段ボール。無造作に食べ散らかされた弁当や菓子パンの残りかす。華やかなビルのネオンが煌びやかに点滅する街角で見かけるギャップが痛々しい。

流れ着いた街角で生きるホームレスたち。これまでは、高齢男性の専売特許だった底辺の世界に若い女性が増加しています。政治家が景気回復、生活向上を訴え始めて久しいですが、減るどころか、若者にまで貧困が拡大している現状を日刊SPA『都会の片隅で“見えないホームレス”になる貧困女性たち』が報じています。

週刊誌の色物記事ではないかと疑いの目をもつなかれ。これはじわじわと着実に広がりを見せる深刻な問題なのです。本日は、少し文体を変えつつ、実際に新宿の街で出会った一人の女性を例に考えてみたいと思います。

新宿の路地で出会ったアヤ(仮名)28歳

その日、アヤ(仮名)は、繁華街のコンビニエンスストアの出入り口で膝を抱えて座っていた。待ち合わせの時間より少し早く着いた筆者は、コンビニで購入したパックのジュースで乾いた喉を潤しながら、ふと、ゴミ箱の隅に座り込むアヤの存在に気が付いた。

上の歯がほとんどない。どうみても20代後半にしか見えない顔つきとは裏腹に幾本ものしわが何本も頬を伝っている。

コンビニで販売されている1リットルパックのお茶を脇に抱え、大事そうに古びたバッグを足元に広げていた。おもむろにバッグをかき回すと、小銭が路上に広がった。見ていられなかった。

「帰るところないの?」

思わず声をかける。歯の無い顔でニッと笑うと、臆せずもせずに筆者のいぶかし気な質問へ返事をする。

「家はあるよ。でも帰らない。帰れない。だから、いつもここにいるの。」

なんとなく、あまり詳しい事情を聞いてはいけない気がした。財布から些少ではあるが、3000円を渡し、近くの漫画喫茶でも良いから、路上にいることはよくないと諭した。アヤは再びニッと笑うと躊躇することなくそれを受け取ってバッグへ押し込んだ。

しかし、筆者の行為が傲慢で軽率だったと気が付くには、そう時間はかからなかった。

抜け出す方法が分からない。だから抜け出せない。

しばらく後、所用を済ませて再びそのコンビニエンスストアの前を通りがかった筆者。終電間近。出入り口の前にうずくまる人影がある。アヤだった。

すでに顔見知りになっていた筆者は、再び話しかけてみる。アヤは、私の矢継ぎ早な質問へ屈託もない笑顔で答えてくれた。

アヤによれば、お金をくれる男性が何人もいるらしく、街角にいなければお金をもらえないのだという。施しをする男性が来れば、温かいシャワーを浴び、ベッドで寝られる。それが、彼女にとっての仕事だった。

はっきりとは言わなかったが、体を男性に委ねてお金をもらっていることは容易に想像ができる。アヤと話している途中、建設作業員風の男がそばを通った。その人は、たまに500円をくれる人なのだという。彼女と話していた20分間。あの人も知り合いという男性が幾人も通り過ぎていった。

定職はないが、運送会社の荷物の仕分けの仕事を派遣でやることもある。しかし、給料の高い派遣の仕事は、すぐにクビになってしまい長続きしない。だから、今は路上で生活するしか方法がないのだと。

「同じような悩みを持ってる女性を支援するNPOがあるの知ってる?」と聞いてみた。聞くまでもなかった。NPOを知らないのだ。

・・・それに。と続けるアヤ。「だって、あたし何度も警察のお世話になってるし、そんなところ行ける訳ないじゃん。」 そう上目使いの屈託のない笑顔で答えた。NPOは警察とは違うことを分かっていなかった。

社会は現実を分かっていない。

終電間際だったこともあり、そのままアヤとは別れた。

家に帰りテレビの報道番組を見れば、アヤのような女性を救うというテーマの番組をたくさん見かける。そして、政治批判をして番組はシャンシャンで次のテーマへ流れてゆく。しかし、では、政治が具体的に彼女を救えるのかと漠然と考えてみた。すでに携帯電話は止まり、新しい情報を得ることができないアヤ。そもそも、文章もほとんど書けないから定職にも就けない。「助ける」という男性は、彼女を抱くだめに甘言しか彼女に与えない。

彼女のような女性を救うためには、いくら政治家が法改正をしたところで救われないであろう。そうではない。私たちが彼女たちの存在に気が付き、話を聞き、住まい、食事、仕事をどうしたら提供できるか考えてゆく。これしか救う方法はないのではないか。今、ボランティアで支援する動きが出始めていると聞く。私たち一人ひとりが、そのような活動の存在を知り、モノ、カネ、またはそれらの活動に参加するのが最も良い。何らかの形で関わる世の中に変化してゆかなければ、今後、この抜け出せない闇に苦しむ女性が増えるのではないだろうか。