2013年に人気が沸騰したテレビドラマ・半沢直樹。大手銀行を舞台に半沢直樹が「やられたらやり返す。倍返しだ!」を合言葉に活躍する痛快なサラリーマン劇でした。その年の流行語大賞にも選ばれた「倍返し」は、今も話題に上るほど人気ですね。
一方、2012年に第一回の放送が始まり、今年で3シーズン目となるドクターX。米倉涼子さん演じるフリーの女医・大門未知子が、日夜、病院で繰り広げられる派閥争い、保身、お金の裏表に一切目もくれず、叩き上げのスキルだけで繰り広げるドラマは、日頃のストレスを発散させてくれる活劇そのものではないでしょうか。
この2つのドラマ。程度の差こそあれ、日頃、仕事をしてゆくと直面する世の中のドロドロをスパッと一刀両断し、自分の信じた道を進んでゆくという点で非常に似ていると思いますね。
ただ、筆者は、半沢直樹と大門未知子のどちらかの人生を選べと言われれば、大門未知子を選ぶかな・・・。と、考えます。その理由をご説明しながら、仕事で上手に生き残ってゆく方法について考えてみたいと思います。
倍返しの半沢。倍返ししない大門未知子
繰り返しになりますが、「倍返し」は、2013年の流行語大賞となりました。今でも、筆者も、筆者の知人も冗談で「倍返しだー」と言ってしまうほど、この言葉は新鮮で、普段、ストレスを抱え込みながら働いているビジネスパーソンにとって、声なき声を一言で代弁してくれる単語です。
しかし、ドラマの最後に面白い展開が待っていました。なんと、倍返し、ひいては100倍返しまで繰り出して銀行の中の「悪」を成敗したはずの半沢直樹が「出向」になってしまうのです。
ドラマ中の設定では、出向=左遷を意味していました。
一方、ドクターXの大門未知子は、「倍返し」は一切登場しません。むしろ、「群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器」のナレーション通り、派閥争いや足を掛けようとする人間には、「いたしません!」の一言でスパッと切り捨てます。倍返しどころか、それに関わろうともしないのです。そして、毎度、高額の報酬を手に入れてゆきます。
組織の中で生き残ろうとしただけの半沢
この2人、結論としてどこが違うのでしょうか。筆者は、「振り回されるかそうでないか」の違いがあるのではないかと考えています。
半沢直樹の場合、まとわりついて来るトラブルを跳ね除けるパワーがありました。そして、それに鉄槌を加えて、上を目指す。確かに素晴らしい能力です。しかし、あくまでも「銀行」という組織の中で、一つの派閥を築く能力に長けていた・・。というだけにしかすぎません。
誤解を恐れずに書くとすれば、ドラマ中に登場する半沢の宿敵・大和田常務。半沢の父は、若き日の大和田に殺されたと言っても過言ではありません。ただ、この大和田常務。自宅に帰れば、妻に頭が上がらず、むしろ、お金を散々、使い込まれ、路頭に迷う、か弱い側面も垣間見えます。つまり、会社の中で生き残るために、あらゆる手段で上手に立ち回ろうとしているにすぎません。
確かに、父親を殺されたという恨みはあるにしても、その大和田常務を倒し、次のポストを期待していた半沢直樹もまた、残念ながら派閥争いの渦中で、生き残りをかけて戦っていただけではないでしょうか。
組織の枠から抜け出せていなかったのです。そして、組織のトップ・頭取から見た時に、決して半沢は銀行全体を成長させてゆくうえで必要ではなかった・・。そして出向。掘り下げてみれば、それだけのことなのかもしれません。
組織に囚われず、自分のスキルを磨くことに興味がある大門
一方の大門は、この「組織」の枠に興味がありません。彼女が求めるものは、単純に「いい仕事がしたい」というシンプルなものです。
それ故に、いい仕事をすることに関係がない「組織」に興味がないのです。
もし、彼女が興味を示すものがあるとすれば、新しい医療技術や、本当に救いたい命。彼女の追い求めるものは、「本質」だけであって、本質から逸れるものには近づこうともしません。
筆者は、ここに彼女の強さと意識の高さを見出します。確かに半沢の能力は素晴らしいものがありました。しかし、あくまでそれは、派閥の中だけのスキルなのです。しかし、大門は、例え職場が変わっても、どこでも生きてゆけるスキルだけを追求しています。他人に振り回されることもありません。
これからの時代、求められるのは大門だ!
今、いつ何時、リストラの憂き目にあうか分からない時代になりました。政府に対しては、景気対策。経営者に対しては従業員の雇用の安定化を求める声が大きくなっています。
しかし、本当に大切なことはなんでしょうか?
筆者は、世の中の風潮が、「政治家や組織に守ってもらいたい!」という方向へ流れているような気がします。
しかし、万が一、これ以上、法律が改正され、さらに景気が一時的に良くなったとしても、一生、安定した暮らしを手に入れることは不可能です。なぜならば、経済の流れが、すでにグローバル化しており、あらゆる国のあらゆる人々を相手にした競争が始まっているからです。もはや、社会が複雑すぎて、長い時間、安定した雇用を創出することなど出来はしないのです。
ならば、組織にしがみつくより、大門未知子のように、狭い枠を飛び越えて、常に本質的なスキルを追い求める生き方を目指した方が正解です。
最後に、やはり、組織や派閥を求める男性・半沢直樹より、本質に果敢に挑戦してゆく女性・大門未知子を見ていると、本当に女性が活躍できる未来の社会を暗示しているようで面白いですね。
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